2026/01/25 12:00
子どもの成長に重要なワーキングメモリ―って?【療育コラム】
「指示を聞き逃してしまうことが多くて、将来が不安」
日々、お子様と向き合う中で、そんな風に感じることはありませんか?
一生懸命に子育てをしているからこそ、周りの子と比べてしまったり、自分の教え方が悪いのかなと、一人で悩みを抱え込んでしまうお父様・お母様は少なくありません。 実は、こうした「聞き取り」や「記憶」のつまずきには、『ワーキングメモリー』という脳の働きが深く関わっています。
今回は、児童福祉の現場から、お子様の「生きづらさ」を「得意」に変えるための、ワーキングメモリーの必須知識について解説します。
1. ワーキングメモリー(作業記憶)とは?
ワーキングメモリーとは、一言で言うと「情報を一時的に脳に留め置き、同時にそれを使って作業する力」のことです。 よく「脳のメモ帳」や「作業机」に例えられます。
この「一時的な記憶の保持」がスムーズにいかないと、途中で「何をすればいいんだっけ?」と迷子になってしまうのです。
2. ワーキングメモリーを構成する5つの要素
ワーキングメモリーは、大きく分けていくつかの要素がチームプレイをして働いています。お子様がどこで立ち止まっているのかを知るヒントになります。
① 一時記憶保持(聴覚・視覚のキープ)
「書き留めるまで覚えておく」ための力です。聞いたことや見たことを、脳内の「仮置き場」に置いておく能力を指します。
② 聞き取り能力(言語の理解)
指示を聞いてから行動に移す際に、最も重要な入り口となる力です。言葉の意味を正しくキャッチできなければ、その後の行動に繋がりません。
③ 音韻ループ(頭の中のリピート)
心の中で「15ページ、3番…」と、ことばを繰り返し唱えることで、聴覚的な記憶を保持する仕組みです。これによって、情報の忘却を防ぎます。
④ 視空間スケッチパッド(イメージの保持)
頭の中で地図を描いたり、図形をイメージしたりする「心のスケッチブック」です。視覚的な情報を映像として記憶に留めます。
⑤ エピソードバッファ(情報の統合)
視覚と聴覚の情報を、過去の経験や知識と照らし合わせてひとつにまとめ、具体的な行動へと繋げる「調整役」です。
「耳からの情報は入りにくいけれど、目で見る(視空間)と理解が早い」といった、その子なりの特徴があるかもしれません。
3. 専門家がアドバイスする「家庭でのサポート」
ワーキングメモリーの特性を理解すると、叱る回数を減らし、お子様の自信を育むことができます。以下のポイントを意識してみてください。
- 指示は短く、一つずつ: 「着替えて、顔を洗って、ランドセルを持ってきて」ではなく、一つ終わってから次を伝えます。
- 視覚情報を活用する: 「口頭だけ」ではなく、ホワイトボードに書く、絵カードを使うなど「目に見える形」にします。
- 「音」の繰り返しを促す: 「何ページだった?」と聞き、本人に声に出して言ってもらうことで記憶に定着しやすくなります。
4. ひとりで悩まず、プロの力を頼ってください
児童福祉の視点で見れば、これらは「育て方」のせいではなく、脳の情報の処理の仕方の「個性」です。 その個性に合わせた支援(環境調整)を行うことで、お子様は驚くほど伸び伸びと過ごせるようになります。
保護者の方が「どうしてできないの?」と苦しくなったときこそ、私たち専門家にご相談ください。 お子様の特性を一緒に分析し、今日からできる具体的な関わり方をアドバイスいたします。
私たちは、あなたの「伴走者」としてここにいます。

